GID Guideline 第4版 (2011年11月)


性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版)
 
日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会
 

委員: 松本洋輔1),阿部輝夫2),池田官司3),織田裕行4),康純5)
佐藤俊樹6),塚田攻7),針間克己8),松永千秋9),山内俊雄10)
齋藤利和11)
外部委員: 舛森直哉12),中塚幹也13),難波祐三郎14),木股敬裕14)

 

著者所属: 1)岡山大学医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室,執筆担当2)あべメンタルクリニック3)北海道文教大学人間科学部作業療法学科4)関西医科大学精神神経科学教室5)大阪医科大学総合医学講座神経精神医学教室6)さとうクリニック7)埼玉医科大学川越クリニック8)はりまメンタルクリニック9)正和会日野病院精神科10)埼玉医科大学名誉学長11)札幌医科大学医学部神経精神医学講座,委員長12)札幌医科大学医学部泌尿器科学講座13)岡山大学大学院保健学研究科14)岡山大学医歯薬学総合研究科形成再建医科学

 

はじめに

 わが国における性同一性障害に関する医療は,法的な問題などのため諸外国に比􍟛すると特有の歴史を辿ってきたが,平成10年10月16日,埼玉医科大学において,わが国で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が施行されて以降,次第に臨床活動が普及するようになった.平成15年7月に,「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法)10)が成立し平成16年7月から施行された.この法律によって,性同一性障害者は,性別適合手術の実施を含む一定の条件のもとで戸籍の性別変更ができるようになった.このような経緯を考慮して日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会は,「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(ガイドライン)の果たした役割について再度検証を加え,性別適合手術適応判定を倫理委員会にゆだねるのではなく医療チームの検討によって実施することを改変の骨子とした第3版ガイドライン8)を,平成18年1月に報告した.
 医療チームの独立性が高まるなか,治療情報の普及に伴って多様な受診者が専門医療機関を訪れるようになった.そのなかで特に若年層での受診者の問題が浮上し,諸外国で実施されている二次性徴抑制ホルモンによる治療をガイドラインのなかにどう位置づけるかが,議論の焦点になった.今回,日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会は,この点を中心に検討を重ね,第4版ガイドラインを作成した.検討は直接面談による会議だけでなく,メーリングリストを用いたインターネット上でも続けられた.

 

Ⅰ.わが国における性同一性障害の医療の歴史
――特に「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」との関連を中心に――

1.「ブルーボーイ事件」と「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」
 
 いわゆるブルーボーイ事件〔東京地方裁判所昭和40年(わ)第307号・第339号・同年(特わ)第927号事件2〕とは,3人の男性性転向症者(性転換症者,あるいは中核的性同一性障害者を指すと考えられる,委員会註)である男娼(ブルーボーイ)の求めに応じて,法定の除外事由がないのに,ゆえなく生殖を不能にすることを目的として睾丸摘出,陰茎切除,造腟など一連の性転換手術を行ったとして,手術を行った産婦人科医は優生保護法違反の責任が問われて昭和44年2月15日東京地裁刑事12部において有罪とされた事件のことである2)
 判決を不服とした被告人は東京高等裁判所に控訴したが,優生保護法28条「何人も,この法律の規定による場合の外,故なく,生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行ってはならない」という規定に違反したとして,第二審の東京高等裁判所は昭和45年11月11日に第一審と同様に有罪の判決を申し渡した.
 さらに判決には「性転換手術に関する考え方」が次のように示されている.
「現在日本においては,性転換手術に関する医学研究も十分ではなく,医学的な前提条件ないしは適用基準は勿論法的な基準や措置も明確でないが,少なくとも次のような条件が必要であると考える.
 

(イ) 手術前には精神医学ないし心理学的な検査と一定期間にわたる観察を行うべきである.
(ロ) 当該患者の家族関係,生活史や将来の生活環境に関する調査が行われるべきである.
(ハ) 手術の適応は,精神科医を混えた専門を異にする複数の医師により検討されたうえで決定され,能力のある医師により実施されるべきである.
(ニ) 診療録はもちろん調査,検査等の資料が作成され,保存されるべきである.
(ホ) 性転換手術の限界と危険性を十分理解しうる能力のある患者に対してのみ手術を行うべきであり,その際手術に関して本人の同意は勿論,配偶者のある場合は配偶者の,未成年者については一定の保護者の同意を得るべきである.」

 
 このように性同一性障害の診断と治療に関する正当な医療とするための基準が示されており,さらに判決では「本件手術に対する評価」として次のように記述されている.
「本件被手術者はいずれも性転向症者であると推認することができる.そこで性転換手術が正当な医療行為として許容されるための前記の条件に照らしてみるに,…(中略)…従って被告人が本件手術に際し,より慎重に医学の他の分野からの検討をも受けるなどして厳格な手続きを進めていたとすれば,これを正当な医療行為と見うる余地があったかもしれないが,格別差し迫った緊急の必要もないのに右の如く自己の判断のみに基づいて,依頼されるや十分な検査,調査もしないで手術を行ったことはなんとしても軽率の謗りを免れないのであって,現在の医学常識から見てこれを正当な医療行為として容認できないものというべきである.」
 以上が「ブルーボーイ事件」の概要である.治療の対象とされたのは性転向者(性転換者,委員会註)と考えられ,結果的には性同一性障害者に対して性別適合手術を行ったと考えられるが,判決では,十分な診察,検査,検討を行わずに,また同意なども得られていないなど手続きが不完全であることから正当な医療行為として容認できないとしている.この判決の妥当性は十分に論議されることはなく,巷では「性転換手術は優生保護法違反である」との結論の一部だけが一人歩きすることになった.「この呪縛」に支配されて,その後長い「暗黒の時代」を迎えることになった.
 この「暗黒の時代」の闇を打ち破るために,日本精神神経学会・性同一性障害に関する特別委員会は,平成9年5月28日付「性同一性障害に関する答申と提言」のなかで「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(以下,初版ガイドライン)6)を公表した.このガイドラインにおいては,性同一性障害は医療の対象とされ,性別適合手術(sex reassignment surgery: SRS)は,性同一性障害の治療として正当な医療行為であると位置づけられた.実際にこの初版ガイドラインを手続き的にも遵守して,平成10年10月16日,埼玉医科大学において,わが国で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が施行された.
 初版ガイドラインに従って性別適合手術を行った医師は,当然,刑事責任を問われてはいない.なぜなら,性同一性障害に対する性別適合手術は,母体保護法28条(平成8年に優生保護法28条より改称)「生殖を不能にすることを目的」にしているのではなく,あくまで性同一性障害に対する治療を目的としており,代替えの方法が現在のところ存在しないことから,母体保護法に違反しないとの考えが法曹界でも趨勢を占めていると思われる9)
 また,刑法上の傷害罪(刑法204条)については,違法性阻却事由に該当する(刑法35条)3つの要件を満たしていると考えられる.
 

性別適合手術について,患者の同意・承諾がある.
性別適合手術は,性同一性障害者に対する治療を目的にしている.
性別適合手術は,医学的に承認された手段・方法に依拠している.

 
 したがって,日本精神神経学会のガイドラインに沿った性別適合手術は,「正当な業務による行為」,すなわち,「正当な医療行為」と言うことができるようになった.事実,現在に至るまで多くの性同一性障害に対する性別適合手術に刑事責任が問われることはなく,社会的にも次第に認知され容認を受けて,「正当な医療行為」としての地歩を確固たるものとした.このような性同一性障害の医療の確立に対して日本精神神経学会の初版ガイドラインの果たした役割は大きくその意義は大きかったと言える.
 

2.治療開始例と「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」
 
 しかしながらその後,わが国において性同一性障害の臨床経験を積むなかでガイドラインの見直しが求められた.最大の理由は初版ガイドラインに沿わないケースが少なからず経験されるようになったことである.概括的な分析を通して,初版ガイドラインに一致しない治療をすでに受けているケースが治療を求めてきた場合に,治療を再構築するための具体的なガイドラインを策定した.
 以上の経緯を経て平成14年7月,日本精神神経学会・性同一性障害に関する第2次特別委員会によって「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」(以下,第2版ガイドライン)7)が提示された.第2版ガイドラインによって,初版ガイドラインに沿わない治療を開始しているケースへの対応が具体的に提示され,これによって治療の再構築ができるようになった.また,治療は原則的に第1段階(精神的サポート),第2段階(ホルモン療法と乳房切除術),第3段階(性器に関する手術)という手順を踏んで進められるが,しかし治療は画一的にこの順序通りに受けなければならないというものではないと明言された.さらに第2段階の治療対象を18歳へと引き下げ,乳房切除術は生殖機能に影響を与えないことから性別適合手術から分離され,第2段階の治療に位置づけられた.このことにより,適応範囲を飛躍的に拡げることになり,治療効率が格段に上がったといえる.
 しかしながら初版ガイドラインと同様に第2版ガイドラインでも,性別適合手術の適応判定に対し,ケースごとに倫理にかなっていることを担保するために倫理委員会の承認が必要とされたままであった.
 

3.性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律と第3版ガイドライン8)
 
 前述の通り,このような臨床活動が普及するとともに「性同一性障害者に対する医療」は,社会に肯定的に受け入れられてきた.そうしたなか平成15年7月特例法が成立し,平成16年7月に施行された.この法律の成立は画期的な出来事であり,性同一性障害の臨床にとっても極めて重要な意義があるだけでなく,性同一性障害の診断と治療に関するガイドラインがこの法律と整合性を保つために再改訂が必要と認識されるに至った.
 特例法を概観すると,少なくとも,2つの大きな意義があることが確認される.
 

1) 戸籍の変更ができるようになったこと
 この法律によって,これまで性同一性障害の当事者にとって重要な課題であった戸籍の性別変更に道が開かれた.しかし法律の名称が示す通り,対象はあくまで性同一性障害者に限られている.
2) 性同一性障害に対する医療が是認されていること
 その法文や政省令や診断書の記載要件に,第2版ガイドラインの内容が大幅に取り入れられており,ガイドラインに沿った治療に対する社会的信頼を示すものとなっている.
 一方,特例法の第3条には次のような要件を示す条項がある.
「第3条家庭裁判所は,性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて,その者の請求により,性別の取扱いの変更の審判をすることができる.
 

1  20歳以上であること.
2  現に婚姻をしていないこと.
3  現に未成年の子がいないこと.(平成20年の法改正で「現に子がいないこと」から変更)
4  生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること.
5  その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること.」

 
 現在のところ,この4ならびに5の規定を満たすには,唯一性別適合手術を受ける以外に他の治療法だけでこの規定を満たすことは不可能である.このことから現段階では,特例法は戸籍上の性別変更の条件として,性別適合手術を前提としていることになる.
 換言すれば,特例法の上記の条項によって,性同一性障害の治療の1つとして,性別適合手術は法的にも正当なものと認められたと理解することができる.したがって,性同一性障害者に対して,これまで確立された性別適合手術を施行する限り,倫理委員会の個別承認を得なくとも,性別適合手術の適応判定をガイドラインに沿って的確に行えば,母体保護法第28条の規定や刑法上の傷害罪(刑法204条)については,違法性阻却事由に該当する(刑法35条)3つの要件を満たしていると考えられる.
 そのため,従来の倫理委員会による性別適合手術の個別承認を撤廃し,医療チームの検討により同手術の適応判定を行うこととし,その判定の妥当性ならびに透明性を確保する新たな方策として法曹関係者や学識経験者などの参加を求める性別適合手術適応判定会議の開催と承認を必要とするものとした.
 また,第2版ガイドライン策定の検討に際して,性同一性障害者の示す症状は多様であり症例による差異が大きいことがすでに記述されており,この多様性は,「生をどのように生きるのか」,そして「性をどのように生きるのか」という価値観ないし人生観の違いに由来する部分が大きいことが明らかになった.これは侵すことのできない基本的人権に属するものであって,可能な限り厳に尊重されるべきである.そこで,第2版ガイドラインで示されていた段階的治療は廃止され,およそ公共の福祉に反しない限り,身体的治療として,ホルモン療法,乳房切除術(FTM)および性別適合手術のいずれの治療法をどのような順序でも選択できるようになった*
 
*ここでは,慣例に従って身体的性別を基準とし,身体的性別が男性である場合をMTF(Male to Female:男性から女性へ),身体的性別が女性である場合をFTM(Female to Male:女性から男性へ)と表記する.

 

Ⅱ.性同一性障害の医療の現状とその問題点
――若年層の受診者とその対応および長期予後について――

 第3版ガイドラインによって医療チームの活動の自由度が上がり,治療情報の普及や受診者の治療選択の幅が広がることで,多様な受診者が専門医療機関を訪れるようになった.そのなかでホルモン療法の対象とならない18歳未満の受診者への対応が問題として浮上してきた.
 第2版ガイドライン以降,ホルモン療法は18歳以上の希望者に実施することとなっている.しかし,性同一性障害患者とりわけ性転換症者では,二次性徴の発来(およそ12歳前後)に伴って自認する性別と身体の性別ギャップの広がりから混乱をきたし,学童期に不登校,引きこもり,虞犯行動,自殺企図など数々の問題を引き起こすことがある.多くは成人期の受診者からレトロスペクティブに得られた情報であるが,受診者層の拡大によって幼児期,児童期に医療機関を受診し,この過程をリアルタイムに医療チームがフォローするケースも散見されるようになった.このように思春期に入って性別違和感が顕著になり実生活に影響を及ぼすケースの場合,諸外国ではgonadotropin releasing hormone agonist(GnRHa)のような二次性徴の発来を抑制するホルモン製剤を使用して,本人の性別違和感を軽減する治療が行われている.この治療は可逆的であり,薬剤の中止で正常な二次性徴が再開する.また,この製剤は思春期の進行を遅らせるため,思春期早期に開始した場合は長期間使用できず,患者周囲を含めた思春期発達の状況を見ながら,使用を中止して身体の性の二次性徴を再開するか,本人の性自認に沿ったホルモンの使用に切り替える必要があるかの判断を,数年のうちに求められる.諸外国の調査研究では,思春期初期に二次性徴の発来を抑制しホルモン療法や性別適合手術につなげたMTF のケースは,成人期以降に初めてホルモン療法を受けた後に性別適合手術を受けたケースに比べて身体の男性が進んでいないため社会適応度が高く生活の質が良いことが報告されている.また,FTM のケースでも月経が停止し乳房の発育を抑制する一方で骨端線が閉じず身長が伸びるなど,身体的違和感を軽減することが可能であり,結果として精神的な安定をもたらすことで社会適応を改善する効果が期待できる.
 これまで二次性徴抑制に関する項目はガイドラインに明記されておらず,上記のような情勢を受けて,これをどのようにガイドラインに位置づけるかの検討が急務になった.諸外国の情勢やすでに得られている知見を総合すると,二次性徴抑制治療はガイドラインに明記することは避けて通れないという認識で委員会は一致し,今回の改訂となった.

 

Ⅲ.第4版ガイドライン改訂の理念とその要点

 すでに記載した通り,これまで思春期初期の症例を対象とした二次性徴抑制治療に関してガイドラインには記載がなかった.しかし,世界的な情勢や国内での若年受診者の増加を受けて,本委員会は二次性徴抑制治療の導入は不可避と考え,これに関する項目を追加することとなった.
 ただし,ここで二次性徴抑制をはじめとする身体的治療は,性別違和に伴う本人の苦悩を軽減し,社会適応を改善するための手段にすぎないことをもう一度確認しておきたい.たとえば,学童期の受診者に対応する場合,単に二次性徴抑制を行うだけで,希望する性別の制服の着用,学内での通称名の使用,着替えやトイレの使用といった学校生活での性別取り扱い全般に対する包括的介入を同時に行わなければ,治療の意味が半減してしまうケースが多いだろう.医療チームには,常に当事者の必要とするもの,求めるものをともに考えて目標を共有し,慎重かつ柔軟に治療法を適応する姿勢が求められている.
 また,若年者に対する身体的治療の適応に際しては,法定代理人の承認を得たとしても,本人の意思能力に成人とは違った一定の制限が存在することから,その適否を決める医療関係者の適切な判断がこれまで以上に求められる.初版ガイドラインが策定された時点では,わが国においてはまだこの分野における臨床経験のある医師がごく少数であったが,次第に経験とデータの集積は進んでおり,今後は診療にあたる医療チームの中心メンバーに対する知識と経験の水準を適切かつ具体的に求めていくことが必要になる.当然,この教育と研修に関しては,当ガイドラインを策定している日本精神神経学会がその責を負うべきであると考えられる.まだこの試みは緒に就いたばかりであり,今回の改訂では経過措置を含めて検討した.
 

1. 二次性徴抑制ホルモンの使用
 前述の通り,思春期初期の症例を対象とした二次性徴抑制治療に関してこれまでのガイドラインには記載がなかった.今回の改訂では,幼児期,児童期の受診者の増加や諸外国での実績などに鑑み,二次性徴抑制治療および望む性別の性ホルモン療法への移行についてのガイドラインを明記する.
2. ホルモン療法開始年齢の引き下げ
 二次性徴抑制治療は,思春期後期までに終了することが望ましいため,その導入に伴い狭義のホルモン療法開始可能年齢を条件付で15歳に引き下げる.18歳未満で開始する場合には相応の慎重さが求められるため,開始を判断する医師の要件,観察期間などについてガイドラインを設定する.
3. 医療を担当する医師の要件と研修環境の整備について
 思春期早期からの二次性徴抑制療法や18歳未満でのホルモン療法開始は,当事者の意思能力に一定の限界があることが予想され,これらの治療の適応を判定する医師に対して従来以上に知識と経験が求められることになる.従来のガイドラインでは,わが国における臨床実践が乏しかったこともあって,診療にあたる医療チームの中心メンバーには「十分な知識と経験」という抽象的な要件を求めていたが,若年例への身体的治療の適応判定にあたっては,より具体的な要件を設定した.これは,従来のガイドラインで触れられていた「日本精神神経学会の主催する(あるいは委託する)専門家研修会での研鑚」を,具体的かつ責任を持って,日本精神神経学会が実施することを求めるものでもある.
 
 これらのことを踏まえて,ガイドラインを再改訂し第4版とするにあたって,第2版,第3版ガイドライン同様,WPATH(The World Professional Association for Transgender Health)のStandards of Care第6版3)および第7版12)を参考とした.これに加えて,アメリカ内分泌学会(The Endocrine Society)のガイドライン4)およびアムステルダム自由大学ジェンダークリニックのガイドライン5)も参考にした.

 

Ⅳ.診断と治療のガイドライン

1. ガイドラインの位置づけ
 第2版ガイドラインでも記述した通り,ガイドラインはあくまで医療者に対する治療指針であり,治療を受ける者に厳格に強いるべき規則ではない.また,当事者がガイドラインを遵守しなければその後の治療を受けられないといった懲罰的な対応を強制するための規則でもない.柔軟性のない厳格な規則として受け止められて教条的に運用すれば,このガイドラインの目的とは逆に,医療の質の低下につながり,ひいては当事者に対する不利益を助長しかねない.このような事態が引き続き起きないように改めて「ガイドラインはあくまで医療者に対する治療指針であり,治療を受ける者に厳格に強いるべき規則ではない」ことを再度確認しておきたい.
 いずれにしても,治療は当事者の生活の質の向上を目的とした手段にすぎないことを銘記し,医療現場では当事者の自己決定と自己責任を最大限に尊重しながら,個々のケースに応じたよりきめ細かい判断が必要である.
2. 医療チーム
 性同一性障害者に対する診断と治療に関する種々の検討は,領域を異にする専門職(メンバー)が医療チームを作って行う.
 

医療チームの構成については,性同一性障害の診断と治療に理解と関心があり,十分な知識と経験を持った精神科医,形成外科医,泌尿器科医,産婦人科医などによって構成される.必要に応じて内分泌専門医,小児科医などが加わることが望ましい.
性同一性障害は,社会生活のあらゆる側面に深く関わる問題であることから,医療チームには,上記診療科医師の他に,心理関係の専門家,ソーシャルワーカーなどの参加が望ましい.
医療チームのメンバーは個々のケースにつき,医学的判断とともに当事者が抱える問題を把握し,きめ細かに援助し,対応することが求められる.
医療チームは,個々のケースについて,本人が希望する身体的治療に対する適応の判定を行う.性別適合手術に対する適応判定に際しては,上記医療チームのメンバーの他,法曹関係者や学識経験者などのメンバーを加え(性別適合手術適応判定会議),判定の法的ないし倫理的妥当性が確保されていることを確認する.
医療チームは,原則としてファーストオピニオンの意見書作成者から,ケースについてのプレゼンテーションを受け質疑応答をするが,ファーストオピニオン担当者が出席できないときは,セカンドオピニオン担当者が替わることもできる.2人の意見書作成者が出席できないときは,電話や書面において質疑応答をすることもできるが,必要に応じて医療チームの精神科医の診察を求めるなど,十分な情報を確保できるようにする.
医療チームは複数の医療機関で構成することもできる(たとえば開業医が医療チームを結成することもできる).ただし,性同一性障害の診断と治療に理解と関心があり,十分な知識と経験を持った医師を中心としたメンバーで構成される必要がある.この観点から医療チームを結成するには,少なくとも中心メンバーは,日本精神神経学会の主催する(あるいは委託する)専門家研修会での研鑚を積んでいることが求められる.残念なことに,これまで専門家研修会の実施は不十分であり,今後は研修会の実施を学会の責務として関連学会の協力を求めながら継続的に実施することが求められる.

 

3. 診断のガイドライン
 診断の手順については,以下に示す通りこれまでのガイドラインと基本的には同様である.次に示す手順に従って,性同一性障害についての診断を決定する.性同一性障害に十分な理解と経験を持つ精神科医が診断にあたることが望ましい.児童思春期例の診断には,児童思春期精神医学の専門家にも意見を求めることが望ましい.2人の精神科医が一致して性同一性障害と診断することで診断は確定する.2人の精神科医の意見が一致しない場合は,さらに経験豊富な精神科医の診察を受けその結果を改めて検討する.
 

1) ジェンダー・アイデンティティの判定

詳細な養育歴・生活史・性行動歴について聴取する
 日常生活の状況,たとえば,服装,人間関係,職業歴などを詳細に聴取し,現在のジェンダー・アイデンティティのあり方,性役割の状況などを明らかにする.また必要に応じて,当事者の同意を得た範囲内で,家族あるいは当事者と親しい関係にある人たちから症状の経過,生活態度,人格に関わる情報,家族関係ならびにその環境などに関する情報を聴取する.そのうえで,ジェンダー・アイデンティティについて総合的多面的に検討を加える.ただし,これらの人たちから情報を得るにあたって,当事者との関係に重大な支障を及ぼさないよう,細心の注意が必要である.
性別違和の実態を明らかにする
 DSM-Ⅳ-TR1)やICD-1011)を参考にしながら,以下のことを中心に検討する.
 

ⅰ) 自らの性別に対する不快感・嫌悪感
自分の一次ならびに二次性徴から解放されたいと考える.自分が間違った性別に生まれたと確信している.乳房やペニス・精巣などを傷つけたりする.FTM では声をつぶそうと声帯を傷つけたりする.
ⅱ) 反対の性別に対する強く持続的な同一感
反対の性別になりたいと強く望み,反対の性別として通用する服装や言動をする.ホルモン療法や手術療法によって,でき得る限り反対の性別の身体的特徴を得たいとの願望を持っている.
ⅲ) 反対の性役割を求める
日常生活のなかでも反対の性別として行動する,あるいは行動しようとする.しぐさや身のこなし・言葉づかいなどにも反対の性役割を望み,反映させる.

 

診察の期間
 特に定めないが,診断に必要な詳細な情報が得られるまで行う.

 

2) 身体的性別の判定
 

身体的性別の判定は原則として,MTF は泌尿器科医,FTM は産婦人科医により実施される.染色体検査,ホルモン検査,内性器ならびに外性器の診察ならびに検査,その他担当する医師が必要と認める検査を行い,その結果を診断を担当する精神科医が確認する(原則として文書で入手する).
上記診察と検査結果に基づき,性分化疾患(性染色体異常など),身体的性別に関連する異常の有無を確認する.

 
注:上記については身体的性別に関する異常の有無が総合的にみて判定できればよい.上記に挙げた検査などの結果が全てそろわなければならないというものではない.
 

3) 除外診断

統合失調症などの精神障害によって,本来のジェンダー・アイデンティティを否認したり,性別適合手術を求めたりするものではないこと.
 
注:統合失調症など他の精神疾患に罹患していることをもって,画一的に治療から排除するものではない.症例ごとに病識を含めた症状の安定度と現実検討力など適応能力を含めて,慎重に検討すべきである.
 
反対の性別を求める主たる理由が,文化的社会的理由による性役割の忌避やもっぱら職業的利得を得るためではないこと.

 

4) 診断の確定
 

以上の点を総合して,身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないことが明らかであれば,これを性同一性障害と診断する.
性分化疾患(性染色体異常など)が認められるケースであっても,身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致していない場合,これらを広く性同一性障害の一部として認める.
 
注:性同一性障害の診断に関する国際的診断基準,たとえばDSM-Ⅳ-TR では,性分化疾患で性別に関する不快感を伴っているものを特定不能の性同一性障害に分類している.本人が性同一性障害に準じた治療を希望する場合には,治療から排除する理由はない.
 
性同一性障害の診断・治療に十分な理解と経験を持つ精神科医が診断にあたることが望ましい.2人の精神科医が一致して性同一性障害と診断することで診断は確定する.2人の精神科医の意見が一致しない場合は,さらに経験豊富な精神科医の診察を受け,その結果を改めて検討する.
 
注:なお,2人の精神科医の診断の一致を求めているのは,性同一性障害の治療に関して,ホルモン療法や手術療法など不可逆的治療を前提としているため,診断が確実であることを要求されるからである.身体的治療を前提としない通常の診断書の場合など,必ずしも2人の精神科医の一致した診断が必要とされるわけではない.この点については個々のケースに応じて柔軟に判断すべきである.
 
4. 治療のガイドライン
 治療は,精神科領域の治療(精神的サポート)と身体的治療(ホルモン療法とFTM における乳房切除術,性別適合手術)で構成される.治療は画一的にこの治療の全てを受けなければならないというものではない.身体的治療については,治療に関する十分な理解を前提としたうえで,自己の責任において,どのような治療をどのような順番で受けるかを自己決定することができる.ただし,診断の手続きと精神科領域の治療を省略することはできない.
 

1) 精神科領域の治療
 精神的サポートと実生活経験(real life experience:RLE).
 

精神科領域の治療に携わる者
 この治療に携わる者は,性同一性障害の診断・治療に十分な理解と関心を有する精神科医,心理関係の専門家が中心となる.精神科領域の治療は身体的治療の後も継続される.
 
注:ここでいう心理関係の専門家は,大学または大学院において心理関連領域を専攻した者,あるいは医療チームにおいて性同一性障害の治療に関して同等以上の経験と力量を持つと認められた者とする.
 
精神科領域の治療の内容と手順
 精神科医による性同一性障害の診断が確定しているか,確定する前であってもジェンダー・アイデンティティに関連する問題があると考えられ,本人自らが治療を希望する場合には,以下の治療を開始することができる.
 

ⅰ) 精神的サポート(現病歴の聴取と共感および支持)
 これまでの生活史のなかで,性同一性障害のために受けてきた精神的,社会的,身体的苦痛について,治療者は十分な時間をかけて注意を傾けて聴き,受容的・支持的かつ共感的に理解しようと努める.
ⅱ) カムアウトの検討
 家族や職場にカムアウトを行った場合,どのような状況が生じるかを具体的にシミュレーションさせる.現在の状況でカムアウトを行った方がよいかどうかをはじめ,カムアウトの範囲や方法,タイミングなどについて検討を加える.必要に応じて,家族面接で理解と協力を求めたり,職場や産業医などとの連携をとるなどの方法も検討すべきであろう.また学生などの場合は,学校関係者との連携をとる方がよいかどうかも含め,本人とともに検討する.
ⅲ) 実生活経験(RLE)
 いずれの性別でどのような生活を送るのが自分にとってふさわしいのかを検討させる.また,すでにどれだけ実現できているか,現状でさらに実現できることがあるかなどを詳細に検討させ,実現に向けての準備や環境作りを行わせる.その間,必要に応じて面接を行い,希望する生活を揺るぎなく継続できるか,生活場面でどのような困難があるかを明らかにする.
 身体的治療を希望する当事者に対しては,その身体的治療を行った際に起こり得る種々の変化を予測し,どのように対応するかを検討させる.また,その生活を現実にできる範囲で実際に行わせてみる.このような生活は必ずしも生活の全般にわたって行う必要はなく,周囲との関係に悪影響を及ぼさない範囲(たとえば,自宅内からはじめ,学校や職場以外,休日の外出時など)でもよいであろう.本人の適応能力や周囲の許容範囲を超えないように細心の注意を払う必要がある.
ⅳ) 精神的安定の確認
 種々の状況に対して精神的に安定して対処できることを確認する.うつ病などの精神科的合併症がある場合には,その合併症の治療を優先し,適応力を生活上支障のないレベルに回復させる.すなわち,性同一性障害に対する治療に耐えられるレベルに到達するまで,性同一性障害の治療を一時留保することも検討すべきである.
ⅴ) 治療の期間
 治療は,上記ⅰ)~ⅳ)の条件を満たすことを確認できるまでの期間行う.

 

精神科領域の治療の評価と身体的治療への移行
 精神科領域の治療の効果判定は,治療の中心となった精神科医もしくは心理関係の専門家が担当する.
 治療期間中に当事者との面接によって明らかになった前述の4-1)-⑵にあるⅰ)~ⅴ)の条件がどの程度達成されたかによって評価する.
 上記の精神科領域の治療を継続した後,本人が身体的治療への移行を希望する場合は,次の手続に従って,身体的治療に移行するための条件が満たされるかどうかを医療チームにおいて判断する.性別適合手術については性別適合手術適応判定会議において判断する.
 

ⅰ) 身体的性別の診断(前述)
 身体的治療への移行に関する検討が行われるまでに,身体的性別に関する診察や諸検査を実施し,その結果を書面(コピーでも可)で医療チームに提出する.
ⅱ) 性同一性障害の診断
 2人の精神科医は,性同一性障害の診断に関する意見書(診断書)を作成して,医療チームに送付する.セカンドオピニオンがファーストオピニオンの内容について異存がない場合は,その旨を示す書面あるいは連名としてもよい.
 
注:ここでいうファーストオピニオンとは,診断書・意見書作成に関する順番であって,必ずしも診療に関する順番との一致を求めるものではない.診断に関する詳細な診断書・意見書をファーストオピニオンとする.
 
ⅲ) 2通の意見書
 精神科領域の治療を担当した治療者を含む2人の意見書作成者は,以下に示す身体的治療へ移行するための条件を検討して,その条件を満たしていると判断した場合は,意見書を医療チームに提出する.この際,セカンドオピニオンがファーストオピニオンの内容について異存がない場合には,その旨を示す意見書でよい.あるいは連名としてもよい.
 2人の意見書作成者の意見が一致しないときは,より経験豊富な3人目の精神科医の意見を求める.医療チームは,これらの意見書をもとに総合的な検討を行い,身体的治療への移行について最終的に判断する.なお,診断と精神科領域の治療を同時に行った場合,診断と治療に関する意見書を1通にまとめることも可能である.

 

身体的治療への意見書作成に携わる者
 精神科領域の治療に携わる者として規定した治療者〔上記4-1)-⑴の精神科医あるいは心理関係の専門家〕が意見書を作成する.そのうち少なくとも1人は精神科医(原則として診断に関わった精神科医)でなければならない.1人は心理関係の専門家が代行することもできる.
 また,2人の意見書作成者のうち1人は医療チームに属していることが望ましい.2人の意見書作成者のいずれも医療チームに属していない場合は,医療チームに属する精神科医が2通の意見書の内容を検討し,必要な場合には改めて診察を行い,診断ならびに身体的治療への移行に関する意見書の内容を確認し,医療チームにおける検討に供する.
 
注:思春期例に関する特例
18歳未満の者にホルモン療法(二次性徴抑制療法を含む)を開始する場合,2人の意見書作成者は,医療チームに所属して継続的に性同一性障害の診療を実施し,複数の身体治療に関する意見書を作成したものに限定する.この特例は暫定的なものであり,将来は精神神経学会の認定する所定の研修を受けた者が意見書を作成するものとする.
 
身体的治療に移行するための条件
 次の条件を満たすとき,身体的治療へと移行することができる.
 

ⅰ) 性別違和の持続
 精神科領域の治療を経た後においても,身体的性別とジェンダー・アイデンティティとの間に不一致が持続し,そのために強い苦悩が続いていること.
ⅱ) 実生活経験(RLE)
 本人の望む新しい生活についての必要十分な検討ができていること.すなわち,身体的性別とジェンダー・アイデンティティとの間に不一致が存在しながらも,可能な範囲で今後の新しい生活を試みており,それについて適合感があり持続して安定していること.
 
注:たとえば,本人の望む生活を試みるなかで,周囲の好奇の目に曝されることへの耐性も必要である.さらに職業に関しては,現在の仕事が継続できる条件を整えているか,一旦職を辞して新しい職に就く場合には,具体的な見通しがついていること.学生の場合には学校側と授業や実習に関しての調整がなされているか,特に調整を要さない科目のみの履修で済むように科目選択が可能であるかなども考慮すべき点である.
 
ⅲ) 身体的変化に伴う状況的対処
 身体的変化に伴う心理的,家庭的,社会的困難に対応できるだけの準備が整っていること.
 
注:たとえば必要な範囲でカムアウトしサポートシステムを獲得していることが望ましい.またカムアウトしないで適応をはかろうとする場合,自らを支え,種々の不安や苦痛に耐えて対処するだけの能力を持っていることが必要となる.
 
ⅳ) 予測不能な事態に対する対処能力
 予期しない事態に対しても現実的に対処できるだけの現実検討力を持ち合わせているか,精神科医や心理関係の専門家などに相談して解決を見出すなどの治療関係が得られていること.
 
注:種々の葛藤や不安に対する耐性が獲得されていて,行動化(衝動的な身体的治療への移行,自傷行為,薬物依存,自殺企図など)や操作(「死ぬ」などの脅しによって周囲を思い通りに動かそうとするなど)をしないことも必要である.
 
ⅴ) インフォームド・デシジョン
 身体的治療による身体的変化や副作用について,少なくとも重要なことに関する説明を受け,十分に理解して同意していること.
ⅵ) 身体的治療を施行するための条件
 希望する各身体的治療を施行するための条件を満たしていること.

 

2) 身体的治療(ホルモン療法,乳房切除,性別適合手術)
 身体的治療は,MTF の場合はホルモン療法(二次性徴抑制療法を含む)と性別適合手術のいずれかあるいはそのすべて,FTM の場合はホルモン療法と乳房切除術および性別適合手術のいずれかあるいはそのすべてを選択できる.どの治療をどのような順番で行うかを検討する.ただし,身体的治療の後も精神科領域の治療は継続される.
 

ホルモン療法(二次性徴抑制療法を含む)

ⅰ) ホルモン療法(二次性徴抑制療法を含む)に携わる者
 ホルモン療法(二次性徴抑制療法を含む)は,医療チームの一員であるか医療チームから依頼を受けた医師であり,かつ内分泌学,小児内分泌学,泌尿器科学,産婦人科学を専門とする医師によって行われるべきである.ただし,地域性などの条件を考慮して,近医や非専門医がホルモン投与をする場合,専門医の診察を定期的に受けるようにするべきである.
ⅱ) 二次性徴抑制療法を施行するための条件
 二次性徴抑制療法を始めるにあたって,次の条件を満たしていることが必要である.
 

身体的治療に移行するための条件〔上記4-1)-⑸〕を満たしていること.ただし,意見書作成者は上記4-1)-⑷の「注」に規定された者とする.
身体的条件:十分な問診,身体的診察と必要な検査を行い,二次性徴抑制療法を行うことで健康に重篤な悪影響を及ぼす疾患などが否定されていること.
インフォームド・デシジョン:二次性徴抑制療法の方法,効果と限界,起こり得る副作用について改めて十分な説明を行い,理解していることを確認したうえで,文書で同意を得ること.未成年に対して行う治療であるから,親権者など法定代理人の同意を得ること(親権者が2人の場合は2人の同意を要する).
家族への説明:親権者など法定代理人を含む家族にも,二次性徴抑制療法の効果と限界,起こり得る副作用について十分な説明を行うこと.
開始時期:GnRHaなどによる二次性徴抑制治療は,Tanner 2期以上の二次性徴を起こしており,二次性徴の発来に著しい違和感を有する者に適応を検討する.二次性徴発来以前には使用しない.これは,思春期が始まると性別違和が寛解する例が少なからず認められるという報告があるためである.Tanner 2期以上であれば年齢は問わないが,同意能力の問題もあり,本人が12歳未満の場合には特に慎重に適応を検討する.
終了時期:二次性徴抑制療法は,漫然と行わず,2年程度をめどに望む性別の性ホルモンによる治療への移行を行うか中止をするかを検討すること.ただし,同年代の二次性徴との大きな齟齬をきたさないよう,15歳未満での性ホルモンによる治療への移行は推奨されない.また,Tanner 4期以降の者には,二次性徴がすでに進行しているため,GnRHaなどは二次性徴抑制の目的で使用できない.
二次性徴抑制療法を行う場合,および18歳未満で二次性徴抑制から望む性別の性ホルモンによる治療に移行する場合,別掲の書式による報告書を日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会に提出すること.
注:Tanner 4期以降の者であっても二次性徴抑制以外の目的,たとえばFTM の月経停止などを目的にGnRHaなどを使用することはできる.この場合はホルモン療法の適応判定に準ずる.

 

ⅲ) ホルモン療法を施行するための条件
 ホルモン療法を始めるにあたって,次の条件を満たしていることが必要である.

身体的治療に移行するための条件〔上記4-1)-⑸〕を満たしていること
身体的条件:十分な問診,身体的診察と必要な検査を行い,ホルモン療法を行うことで健康に重篤な悪影響を及ぼす疾患などが否定されていること.
 
注:たとえば血栓症や重症肝機能障害が否定されていること.
 
インフォームド・デシジョン:ホルモン療法の方法,効果と限界,起こり得る副作用について改めて十分な説明を行い,理解していることを確認したうえで,文書で同意を得ること.
家族・パートナーへの説明:家族,パートナーにも必要に応じて,ホルモン療法の効果と限界,起こり得る副作用について十分な説明を行うこと.
年齢:ホルモンによる治療は原則として18歳以上であること.ただし,2年以上医療チームで経過を観察し,特に必要であると認められれば15歳以上でホルモンによる治療を開始してよいが,意見書作成者は上記4-1)-⑷の「注」に規定された者とする.未成年者については親権者など法定代理人の同意を得ること(親権者が2人の場合は2人の同意を要する).
すでに,2通の意見書をもとに医療チームの検討を経て乳房切除術を行った者がホルモン療法を希望する場合には,改めてホルモン療法に関する意見書を少なくとも1人(1人だけの場合には精神科医)の意見書作成者〔上記4-1)-⑷〕から得て,医療チームにおいて検討し,ホルモン療法の適応であることを確認していること.
15歳以上18歳未満の者にホルモン療法を行う場合は,別掲の書式による報告書を日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会に提出すること.

 

ⅳ) 二次性徴抑制療法について
 

Tanner 2から3期のMTF には,男性としての二次性徴の進行を抑制するため,GnRHa,あるいはプロゲスチン(黄体ホルモン類似物)か抗アンドロゲン剤を使用する.同時期のFTM には,女性としての二次性徴の抑制および月経の停止を目的に,GnRHaかプロゲスチンを使用する.
この治療は可逆的であり,治療の中止で二次性徴の進行は再開する.効果判定と治療継続にあたっては,内分泌あるいは産婦人科・泌尿器科専門医の定期的な検査および評価が推奨される.また,若年時には性自認が揺らぐ可能性が成人以降より高いため,使用継続にあたって精神科医またはメンタルヘルスの専門家による定期的な観察が推奨される.
二次性徴抑制療法は正常の思春期発達の文脈のなかで評価されるべきであり,本人の発達や同年代の二次性徴との齟齬をきたさないなどの慎重な配慮を要する.

 

ⅴ) ホルモン療法について
 

MTF の場合,エストロゲン製剤やゲスタゲン製剤の投与を行う.FTM では,アンドロゲン製剤の投与を行う.二次性徴抑制を行った若年者に投与する場合は,少量より開始し,漸次投与量を増加する.投与量は血中ホルモンの測定などにより,その効果を評価しながら適量を決定する.
 
注:過量投与は,投与量に比例した効果が上がらないばかりか,副作用の危険を増大させるだけである.
 
ホルモン療法により期待される効果は,性ホルモンとしての直接的な効果と視床下部-下垂体系抑制による性腺刺激ホルモン分泌の低下を介した効果がある.全身的な効果は以下の通りである.MTF に対するエストロゲン投与では,乳腺組織の増大,脂肪の沈着,体毛の変化,不可逆的な精巣の萎縮と造精機能喪失などが起こり得る.一方,FTM に対するアンドロゲン投与では,月経の停止,体重増加,脂肪の減少,にきび,声の変化,クリトリスの肥大,体毛の増加と禿頭などが起こり得る.このなかには精巣萎縮や造精機能喪失に代表されるような不可逆的な変化もあり得る.
ホルモン療法に伴って,血栓症など致死的な副作用が発生する可能性がある.また,狭心症など心血管イベント,肝機能障害,胆石,肝腫瘍,下垂体腫瘍などの可能性がある.したがってホルモン療法の際には常に副作用に注意し,開始前のみでなく,開始後も定期的な検査を行う.特にエストロゲン製剤の投与に際しては,肝機能などの一般臨床検査に加えて,血液凝固能の亢進,血中プロラクチンの上昇などに注意する必要がある.
ホルモン療法は,原則的には他の内科疾患や心血管系合併症などを伴わない場合に行うべきである.特に糖尿病,高血圧,血液凝固異常,内分泌疾患,悪性腫瘍などはホルモン療法の副作用のリスクを増大する可能性がある.また,肥満,喫煙も同様である.しかし,ホルモン療法に伴う利点も多々あることから,その可否については,個々の例において,利益と不利益を熟慮したうえで総合的な評価を行い,最終的に判断するべきである.
ホルモン療法に用いる薬剤の投与量は,精巣摘出術または卵巣摘出術の後は減量が可能である.しかし,骨粗鬆症などの可能性を考慮し,生涯にわたって継続するべきである.

 

FTMに対する乳房切除術
 FTM の場合,身体的治療の1つとして乳房切除術を選択することができる.ホルモン療法と同時にあるいは時期を違えて行うこともできる.あるいはホルモン療法を行わず,乳房切除術のみを行うこともできる.乳房切除術を性別適合手術と同時に行うことも可能であるが,身体的侵襲の程度などを考慮して,個々に判断すべきである.
 

ⅰ) 乳房切除術に携わる者

乳房切除術に携わる者は,医療チームの一員であるか,医療チームから依頼された形成外科医あるいは美容外科医であることが原則である.ただし,乳房切除術を受ける本人の責任において他の医療機関を選択することもできる.その場合,手術に際して麻酔科医が麻酔を担当するなど,一定の水準を達成している医療機関を推奨する.
性同一性障害および乳房切除術に関して,十分な知識・理解と技術を持っていること.
ⅱ) 乳房切除術を施行するための条件
 乳房切除術を施行するにあたって,次の条件を満たしていることが必要である.
 

身体的治療に移行するための条件〔上記4-1)-⑸〕を満たしていること.
身体的条件:十分な問診,身体的診察と必要な検査を行い,乳房切除術を行うことによって健康に重篤な明らかな悪影響を及ぼすような疾患が否定されていること.
 
注:たとえば麻酔薬に対するアレルギーや重度の肝障害など.
 
インフォームド・デシジョン:乳房切除術の方法,効果と限界,起こり得る副作用について改めて十分な説明を行い,理解していることを確認したうえで,文書で同意を得ること.
家族・パートナーへの説明:家族,パートナーにも必要に応じ,乳房切除術の具体的術式,予想される結果,手術上のリスクについて十分な説明を行うこと.
年齢:年齢は18歳以上であること.18歳以上の未成年については親権者など法定代理人の同意を得ること(親権者が2人の場合は2人の同意を要する).
すでに,2通の意見書をもとに医療チームの検討を経てホルモン療法に移行している者が乳房切除術を希望する場合には,改めて乳房切除術に関する意見書を少なくとも1人(1人だけの場合には精神科医)の意見書作成者〔上記4-1)-⑷〕から得て,医療チームにおいて検討し,手術適応であることを確認していること.

 

性別適合手術(sex reassignment surgery:SRS)
 性別適合手術に関しては,2通の意見書をもとに性別適合手術適応判定会議において,その適応を判断する.
 ここで規定する性別適合手術の範囲は,基本的には内外性器の手術に関わるものであり,
 

MTF の場合: 精巣摘出術,陰茎切除術と造腟術および外陰部形成術
FTM の場合: 第1段階の手術―卵巣摘出術,子宮摘出術,尿道延長術,腟閉鎖術
第2段階の手術―陰茎形成術

 
などが考えられる.ただし,どのような範囲の手術をどのように行うかの選択は,それぞれがもたらし得る結果と限界やリスクについて十分な情報を提供するなかで,本人の意思を尊重しながら決定されるべきである.
 

ⅰ) 性別適合手術を行う者
 

性別適合手術は,医療チームに属する形成外科医・泌尿器科医・産婦人科医などが協力して行うことが原則である.ただし,医療チームが別の医療機関に性別適合手術を依頼することもできる.
性別適合手術に関して十分な技量を有する者であることはもちろんであるが,同時に性同一性障害についての知識,特にその心性に対する十分な理解と経験を持ち合わせていることが望まれる.

 

ⅱ) 性別適合手術を施行するための条件
 性別適合手術を施行するにあたり次の条件を満たしていることが必要である.
 

身体的治療に移行するための条件〔上記4-1)-⑸〕を満たしていること.
身体的条件:十分な問診,身体的診察と必要な検査を行い,性別適合手術を行うことによって健康に重篤な明らかな悪影響を及ぼすような疾患が否定されていること.
 
注:たとえば麻酔薬に対するアレルギーや重度の肝障害など.
 
実生活経験:プライベートな場所では,希望する性別での生活を当事者が望むスタイルでほぼ完全に送られており,この状態が後戻りしないで少なくとも1年以上続いていること(観察期間をすべて1年以上とする必要はないが,この条件を満たしていることを意見書作成者〔上記4-1)-⑷〕が十分確信できる内容が提示されていること.ただし,他の身体的治療を受けていない場合,あるいはホルモン療法など他の身体的治療を希望しない場合には,より長期の観察期間を設けることが望ましい).
手術に伴う休暇などの確保:手術に必要な期間,仕事や学校を休むことができるか,退職を考える場合には,次の職に関して具体的な見通しが立っていること.手術後も当面生活に必要な経済的安定が確保される見通しが立っていること.
サポートシステムの確保:家族やパートナーなどのサポートシステムが安定的に得られていること.それが得られない場合,あるいはカムアウトしていない場合には,精神的にも経済的にも安定的に自立できていること.
インフォームド・デシジョン:手術の範囲,方法,予想される効果,起こり得る合併症・随伴症状などについて十分な説明を行い,理解したうえで手術法が決定されたことを文書に明記して保存すること.
家族・パートナーへの説明:家族,パートナーにも必要に応じ,具体的術式や予想される結果,手術上のリスクについて十分な説明を行っていること.
年齢は20歳以上であること.

 

ⅲ) 手術内容の確認と検討
 本人の希望する手術が具体的に明らかにされ,医療チームの詳細な検討によって,それが本人に対する治療として適切であると判断される必要がある.
 
注:たとえば,MTF が精巣切除を行い,しばらく経過を見て,ある時点でさらなる手術を求めることもあり得る.
 
注:MTF に対する豊胸術や甲状軟骨の形成術に関しては,性同一性障害の治療の一環として行われてはいるが,身体的条件やボディイメージなどには個人差も大きく,その選択は自己決定にゆだねられる.他の美容外科的手術ないし処置(たとえば脱毛など)に関しても本人の自己決定に任せられるが,各方面の専門家による助言を求めるなど,慎重であるべきことは同様である.
 
身体的治療と精神科領域の治療の連携(新しい生活におけるQOL の向上)
 精神科領域の治療に携わる者〔上記4-1)-⑴〕として定められた精神科医あるいは心理関係の専門家は,ホルモン療法や乳房切除術,性別適合手術など身体的治療の施行後においても継続的に面接を行い,精神的サポートと新しい生活におけるQOL の向上に向けて援助する.
 

身体的治療施行前において不十分であった点をさらに検討し,各身体的治療の結果,希望する新しい生活のどのような点が達成され,どのような問題が残されているかを明らかにする.身体的治療を行わない者についても同様の検討を加える.
新しい生活におけるQOL を向上させるうえで残されている問題について,どのような解決方法があるかを詳細に検討し,よりよい適応の仕方を探る.身体的治療に移行するための条件として定めた事項〔上記4-1)-⑸〕が揺るぎなく継続し,より安定したものとなっていることを確かめる.
身体的治療に移行するにあたって,職を辞したり休学あるいは退学した場合には,新たな状況のもとで社会適応できるように援助する(種々の助言・診断書・意見書作成などにより状況改善をはかるなど).

 

Ⅴ.すでに治療を開始している症例への対応

 これまでのガイドラインによらずに治療を受けてきたケース(初版ガイドライン策定以前の身体的治療も含める),何らかの理由により途中からガイドラインに沿わない治療を受けたケースが治療を求めてきた場合,次の手順に従って検討する.
 

診断のガイドライン(Ⅳ-3)に示された手順に従って診断を確定する.
これまでの治療の妥当性を考慮しながら,必要な場合には治療の改善ないしは中止を指導する.
本人の希望する治療について,治療のガイドライン(Ⅴ-4)に沿って検討する.

 

Ⅵ.診療にあたる精神科医に関する暫定措置

 今回の改訂以前から,診療にあたる医療チームの中心メンバーには「十分な知識と経験」と「日本精神神経学会の主催する(あるいは委託する)専門家研修会での研鑚」を求めているにもかかわらず理念的,抽象的なものにとどまっていた.その状況のなか,今回の改訂では,主に思春期前期から18歳未満の当事者への対応が議論の中心であった.すでに論じたように,若年者に対する身体的治療の適応に際しては,たとえ法定代理人の承認を得たとしても,本人の意思能力に成人とは違った一定の制限が存在することから,その適否を決める医療関係者の適切な判断がこれまで以上に求められることとなる.すなわち,医療チームの中心メンバーの資質が問われることになったのである.今回は,二次性徴抑制療法および18歳未満でのホルモン療法の適応にあたっては,「2人の意見書作成者は,医療チームに所属して継続的に性同一性障害の診療を実施し,複数の身体治療に関する意見書を作成したものに限定する」という特例を設けた.この特例はあくまで暫定的なものであり,移行措置である.将来は精神神経学会の認定する所定の研修を受けた者が意見書を作成することとなる.前述のように,従来のガイドラインで触れられていた「日本精神神経学会の主催する(あるいは委託する)専門家研修会での研鑚」を,具体的かつ責任を持って,日本精神神経学会が実施することを求めるものでもある.したがって,今後は専門家研修会の内容について早急に議論することが必要である.

 

おわりに

 数多くの先達の努力と当事者達の真摯で勇気に満ちた行動によって,平成15年7月に特例法が制定されるなど,性同一性障害に対する治療が公知され,大きな成果が上げられてきた.その一方で,諸外国の臨床実践や研究結果の進展,わが国での知見の集積により,医療の提供がさらに高いレベルで望まれる時代になっている.
 第3版ガイドラインの最後にも触れているが,性同一性障害者の治療の究極の目標は社会のなかで自らの希望する性別で生活していくことにある.診断と治療に携わる医療体制もこれに見合ったものに進化させていく必要がある.解決しなければならない課題は,いまだに数多く残されている.たとえば,治療者や拠点病院は不足したままでありガイドラインに沿った治療を国内で受けることが困難な状況が続いている.このために海外での性別適合手術を求める傾向が相変わらず続いている.しかし,海外で性別適合手術を受けてきた当事者のなかには,基本的な知識を持ち合わせないケースも多々みられ,術後の合併症に苦しむケースも少なからず経験される.この現状を打開するためには性同一性障害に関する医学的啓発活動をより意欲的に展開することが必要である.
 また,ホルモン療法や手術療法はいまだ保険適用がなされていない.身体的治療の保険適用を獲得することも急務であり関連する他学会などと共同して積極的に働きかけていく必要があろう.保険適用が認められるようになれば,当事者の経済的負担の軽減に加えて,さらに一般的な医療への浸透が見込まれ,治療拠点の増加も期待できる.
 さらに,今回大きな問題として浮上してきた論点として,日本精神神経学会が研修会などの機会を積極的に提供し,専門的な治療に携わる医師や専門職の数と質を担保する必要性が挙げられる.特に医療チームの中心的メンバーは,知識と経験を十分に持つことは当然のことであり,研修会は必須のものである.関連した学会や研究会に委託するなどの方法も含め,日本精神神経学会が研修の場を提供する体制を確立していくことが要請される.
 今回は,これまで対応に苦慮してきた若年受診者への治療に関して改訂作業が進められ,不十分であった専門職の要件についても検討したが,現在なお「道半ば」であることを銘記すべきである.今後もガイドラインがより現実に即したものになるように改訂の努力を継続していく必要があることは論を待たない.

 

文献

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2) 判例タイムズ,233; 231,1969(いわゆるブルーボーイ事件判決)
3) HBIGDA(The Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association): The Standards of Care for Gender Identity Disorders,6th ed.(東優子,針間克己訳:性同一性障害の治療とケアに関する基準(SOC).臨床精神医学,30(7); 887-902,2001
4) Hembree,W.C.,Cohen-Kettenis,P.,Delemarrevan de Waal,H.A.,et al.: Endocrine Society.Endocrine treatment of transsexual persons: an Endocrine Society clinical practice guideline.J Clin Endocrinol Metab,94; 3132-3154, 2009
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このページに置いてあるガイドラインは、私みちよが個人的な研究のために纏めているものです。
私みちよは、日本精神神経学会、および性同一性障害に関する委員会と、全く関係はありません。
内容の正確性には充分に注意して作成しておりますが、あくまで参考として御覧ください。

みっちょ

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